低用量ピル(経口避妊薬)は、女性の卵巣でつくられるホルモンでもある、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2つが主成分で作られており、OC、とも呼ばれています。

最も確実で安全性の高い低用量ピルにより、「望まない妊娠」から自分自身を守ることができます。

そんな女性ホルモンの作用を利用して、避妊だけではなく、生理不順・貧血・子宮内膜症の改善や月経前症候群(PMS)・生理痛・ニキビや肌荒れ・卵巣がんや子宮体がんの予防にも用いられている薬です。

簡単に言うと、低用量ピル(経口避妊薬)は、排卵後から生理が来るまでの状態、あるいは妊娠している時と同じ状態を作り出すことで、避妊だけではなく、多様な治療に用いられています。

低用量ピル(経口避妊薬)のはたらき

低用量ピル(経口避妊薬)を内服することにより排卵を抑制し、女性ホルモンの分泌をコントロールすることで確実に避妊することができます。

さらに、月経前症候群(PMS)の予防や月経痛(生理痛)の治療にも使用されています。

米国女性の年齢ごとの避妊法

海外の女性アスリートの中では、低用量ピル(経口避妊薬)の使用による避妊と月経前症状の改善はすでに常識的となっており、生理痛や試合日の生理回避など約83%のトップアスリートに使用されています。

その他にも、ニキビや肌荒れが生理前後に起こる理由として、ホルモンバランスの乱れにつながると考えられています。

特に卵巣から分泌されるテストステロンという男性ホルモンがニキビや肌荒れを起こす要因として考えられています。

低用量ピル(経口避妊薬)を内服して排卵を抑制することでテストステロンが分泌されなくなり、ホルモンバランスが整うことによって、月経前後のニキビや肌荒れに効果があると考えられています。

ニキビや肌荒れに最も高い効果が期待できるのはマーベロンとなっており、他の低用量ピル(経口避妊薬)よりもニキビや肌荒れへの効果が高いと言われています。

低用量ピル(経口避妊薬)の成分黄体ホルモン

低用量ピル(経口避妊薬)の成分である黄体ホルモン(プロゲステロン)は、子宮内を受精卵が着床しやすいように整え、基礎体温を上げて妊娠しやすい環境にしてくれる、とても大切なホルモンです。

女性の月経周期(生理周期)は四つの時期に分けられ、月経期・卵胞期・排卵期・黄体期と呼ばれています。

黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用で、血流が良くなり、十分な栄養を子宮内膜に与えることによって、子宮内膜をふわふわで厚くした状態に保ちます。

基礎体温が高温期に入るのも、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されている影響です。

黄体ホルモン(プロゲステロン)は、排卵日以降に分泌が増え、次の月経が始まるまでの間の黄体期が最も黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌される時期になります。

プロゲステロン

他にも黄体ホルモン(プロゲステロン)には、排卵後に子宮内膜やその周辺の血流良くするはたらきがあります。

月経前症候群(PMS)の原因の一つが、この黄体ホルモン(プロゲステロン)や卵胞ホルモン(エストロゲン)によるホルモンバランスの乱れと言われています。

ホルモンバランスが崩れると月経不順や不正出血の原因にもなります。

低用量ピル(経口避妊薬)を服用すると、体外から女性ホルモンが取り入れられ、女性ホルモンが過剰に分泌されていると脳が判断します。

それにより、女性ホルモンである卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの分泌を抑えるよう脳が指示を出します。

卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの分泌が抑えられると、体内は妊娠している状態に近い環境になりますので、結果的に排卵が抑制されます。

女性ホルモンと月経周期

低用量ピル(経口避妊薬)の成分卵胞ホルモン

低用量ピル(経口避妊薬)の成分である卵胞ホルモン(エストロゲン)は、排卵前の子宮内膜の増殖期に分泌量が増加します。

らせん動脈を増生させることで、子宮内膜機能層の増殖・肥厚を促して、受精卵が子宮に着床しやすい環境をつくります。

他にも妊娠に備えて、子宮、卵巣、乳房などの器官のはたらきを高め、膣や皮膚、膣以外の粘膜にも潤いを与えます。

分泌量がピークを迎えるのは20代で、以後分泌量は徐々に減少していきます。

エストロゲン
       引用:https://www.kounenki-life.net/

卵胞ホルモン(エストロゲン)が活発に分泌される間は、自律神経のバランスを整えることから、脳の血流が促進し、精神的にも身体的にも体調が良く、気分も落ち着いている時期です。

月経前症候群(PMS)の原因の一つが、この卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)によるホルモンバランスの乱れと言われています。

ホルモンバランスが崩れると月経不順や不正出血の原因にもなります。

低用量ピル(経口避妊薬)は、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の合剤で、排卵抑制などによる避妊効果や、月経困難症・子宮内膜症の症状緩和薬として使用されています。

また、更年期障害の治療としてもホルモン補充療法として卵胞ホルモン(エストロゲン)は使用されています。

卵胞ホルモン(エストロゲン)は、体内で女性ホルモンとして作り出され、卵巣から分泌される成分ですので、外部から卵胞ホルモン(エストロゲン)そのものを摂取することはできませんが、卵胞ホルモン(エストロゲン)を正しく分泌させるためには、まず健康であることが基本です。

毎日の食事は栄養バランスの良いものを摂り入れ、健康な体を作るように心がけましょう。

特に、大豆イソフラボン、ビタミンE、ビタミンB6を含む食材には、不足した卵胞ホルモン(エストロゲン)を補ったり、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌を促したりする効果があるとされていますので、積極的になるべく多く摂るようにしましょう。

その他に、卵胞ホルモン(エストロゲン)などの女性ホルモンをしっかりと分泌させるには、規則正しい生活を送ることも大切です。

特に睡眠不足になると、女性ホルモンの分泌が崩れてしまうので、女性ホルモンの正常な分泌に睡眠不足は大敵です。

寝室の環境を整え、寝つきが良くなるようにストレッチで体を温める、就寝前に長時間スマートフォンを使用することを控えるなど、良質な睡眠がとれるように工夫をしましょう。

また、身体の冷えもホルモンバランスの乱れにつながりますので注意が必要です。

特に冷え性の人は、腹巻や靴下を着用したり、冷たい飲み物を避け,温かい飲み物を飲むようにして、体内から身体を温めることが大事です。

39℃~41℃前後の温度の湯船に10~15分は浸かるようにするなど、十分な冷え対策をすることが大切です。

エストロゲンの変化

女性ホルモンの働きについてのまとめ

経口避妊薬としての低用量ピルは、避妊はもちろんですが、その他月経前症候群(PMS)の予防、月経痛(生理痛)の改善、女性ホルモンのバランスを整える、など様々な効果も発揮している、現代女性の中では日常的に服用されているお薬です。

過度なストレスや、偏食を避けて、軽い運動をする習慣を身につけることによって、卵胞ホルモン(エストロゲン)が正しく分泌されるようになります。

卵胞ホルモン(エストロゲン)は気持ちを落ち着かせ、体調も良くしてくれる、とても良いホルモンです。

毎日の生活を見直し、心も身体も健康に過ごせるようにしましょう。

この記事を書いた人

Dr.X
低用量ピルによる避妊について,使い方から薬理作用・副作用まで,なるべくわかりやすく解説します。